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なおと世界一周旅日記  Vol. 52 「escape」

11/23 (日)    in タンジェ(モロッコ)

リスボンから夜行バスで、スペインのセヴィーリャに向かう。

出発から6時間、早朝5時、セヴィーリャにたどり着く。
大雨だった。
とりあえずユースホステルに行った。
が、なんとベッドは空いてないと言われる。
11時、つまりチェックアウトの時間後なら、入れるという。
それまで、この寒いロビーのベンチで寝て待つしかないのか・・・。
うーむ、どうしたらいいものか。
俺の頭には、3つの選択肢が浮かんでいた。
一つは、レセプションのオヤジが言うように、11時のチェックアウトまで待ち、
チェックインする。
2つ目は、他の安宿を探す。
3つ目は、こうなったら一気に目的地であるモロッコへ走り続ける。

長く旅をしていると、選択肢が何個かあるこのようなシィチュエーションに、
時々ぶつかる。
はじめは、勿論いろいろ悩む。
うーむ、どうしよう。ど
うしたら一番いいんだ。
いろんなシュミレーションが頭の中で高速回転を始める。
未来の自分を、映像付き、シィチュエーション別に想像を展開する。
しかし最後は、結局、直感、今感じていることを信じるしかない。
なんで、今満室なのか。
それは、ここに今いるべきではないことではないか?

セヴィーリャからアルヘシラス行きのバスに乗っていた。
ここはもう 「駒を先に進めなさい」 ということだと解釈し、
数日滞在するはずであったセヴィーリャを通り抜け、モロッコに向かった。
そのバスの中、信じられない光景を目の当たりにした。

セヴィーリャを出てから、30分くらい経った時であっただろうか。
バスはちょうど見通しのいい平野を走っていた。
窓の外をふと眺めると、思わずその景色に息をのんだ。
虹だ。
大きく、くっきりと、その美しい姿を見せてくれている。
これまで生きてきた記憶の中で、これほどはっきりと半円を描き、
長く、完成体ともいえる状態の虹を見た記憶はない。
大雨があがった後に現れ、実に素晴らしいショウを見せてくれた。
夢中になって窓にかじりつき、たぶん口をあんぐりあけて眺めていたに違いない。
自然の作り出すメルヘンチックなテーマパークの入り口のような、
はたまた、自然の織り成すCGのような、3D感覚だった。

お昼頃に、アルヘシラスというスペインの南の町に到着。
そこからフェリーで、ジブラルタル海峡を渡り、アフリカ大陸のモロッコを目指した。

モロッコの玄関口、タンジェという町に夕方に着いた時、
タンジェで一泊するか、それとも先に進むか、また選択を迫られた。
が、その時もう俺は、先へ先へ進む快感を覚えてしまっていた。
モロッコで一番賑やかな町、マラケシュへ向かおう。
鉄道の駅に行き、切符を購入、深夜の出発を待っていた。

モロッコにやって来たのは、サハラ砂漠など、その広大な自然に触れるという目的も勿論あったが、無意識のうちに、もっと大きい理由が存在していた気がする。

escape。
逃げてきた。
あのヨーロッパで感じた孤独から。

そして、戻ってきた。
この、アラブの空気に。
この、人間と人間の距離の近さに。
町の人々に話しかけられることに、懐かしさを感じた。

   そういえば、まだアラブの国はラマダン中☆なおと



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