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なおと世界一周旅日記  Vol.185    「消えた80ドル」       

7/24(土)       in サンティアゴ・デ・クーバ(キューバ)

衝撃的な事件が起こった。
舞台は、サンティアゴの宿。
事件の真相はいまだ判明されていない。
一生謎に包まれたままで、解き明かされることはないであろう。

サンティアゴに来て3日目の、まっ昼間1時。
カーニバルの凄さに圧倒されっ放しで、熱くなっていた俺の体温が一気に冷めた。
財布に入れてあった20ドルが無くなっている・・・。
おかしいな、まさか?!
パスポートに隠してあった370ドルを、あわてて確認してみる。
うん? 310ドルしかない。
60$足りない。
合わせて、80ドルが無くなっている。
やられた〜ー。

この旅始まって以来の、大きな被害である。
インドでシタール他を送った荷物が届かない事件の被害はもっとはるかに大きいが、盗まれたという意味では初めてのことであった。
旅人の間では、何百ドルを盗まれている人もかなりザラにいるので、
それらに比べると少ない方であるのだが、痛手だ・・・。

部屋の中に置いてあったお金。
部屋の外に出ている間の犯行。
時間はかなり限られている。
最後にお金をチェックした昨日の夕方4時半から、
盗まれたことに気付いた今日の昼の1時までの、20時間半の間の事である。
その間部屋に居なかったのは、3回。
夕飯を作って食べていた時、夜カーニバルに出かけていた時、
朝食を作って食べていた時だ。
食事時の犯行はきわめて確率は低いだろう。
料理をしていたキッチンも、食べていたテーブルも、自分の部屋のまわりであり、
誰かが部屋に入ったら、すぐ気が付いたであろうから。
そうなると、カーニバルに出かけていた間の犯行が濃厚だ。
夜の10時に出てから、深夜3時に帰ってくるまでの5時間。

気を抜いていた。
注意を怠っていた。
部屋に鍵がないにも関わらず、財布も、お金を挟んでいたパスポートも
厳重なガードもせずに、ちょっと袋に入れただけであった。
自分の責任であるのだが、痛手だ・・・。

宿の家族はみんないい人であった。
おかみのマルタに、30歳くらいの娘、その娘は3歳くらいか・・・。
宿の住人はもう一人、30代前後の男が2つ隣の部屋に住んでいた。
この敷地にはこの4人。
時々、知り合いや、娘さんの元旦那などが遊びにきたりする。
基本的に鍵はかかっているので、知らない人の出入りは難しいようだ。

この宿も知り合いの方の紹介の紹介であり、信用できると思っていた。
その人のよさから、宿の人たちが盗むとは考えがたい。
なら、誰だ? うーむ。
ただ、一応、80ドルが消えた事実は間違いない。
それがここで起きた事も、間違いない。
そのことを伝えなければと、おかみのマルタに話してみた。

それからが大変だった。
そんなことはあり得ないと主張するのだ。
家族は盗るわけがないし、もう一人の住人の帰宅時間も俺の後であり、
そのアリバイもあり、その他誰もその時間に、家の中に入ってないと言うのだ。
絶対そんなことはない、の一点張り。
さらに、そんなことを言われるのは心外だと、だんだん怒り出し、
終いには泣き出してしまった。

「いやいや、あなた達を疑っているのではなくて、
誰か他の人達が入って来なかったかなと思って・・。
何よりも、一応その消えた事実だけを伝えたかっただけだ。」と、
全さんを通して説明してもらったが、やはりダメ。
その対応に俺も困り果ててしまった。

つまり、誰も他の人が入って来てはいないのだから、私たちを疑っているのだ、という猛烈な被害妄想から、いや、自分たちのプライドを傷つけられたことから、
すっかり傷ついてしまい、元気がなくなってしまった。

ごめんなさい、マルタ。
気分はすっかり加害者であった。
お金を盗まれたのは俺、被害にあったのは俺なのだが、
そのマルタの反応からは、俺が加害者の気分になっていた。

なぜ、犯人がパスポートに挟んであった全部のお金を盗らなかったか?
それは、俺がお金を盗まれたことに気付くのを遅らせるためであろう。
よくある手口である。
お金を確認した時に、まるっきり無くなっていると盗まれたことにすぐに気が付く。
しかし、一部を盗んだ場合、被害者がお金をチェックした時に、まめな人以外は、
「どれどれ、あーあるある」といった具合で、その全金額を数えずに、
お金が在るということだけの確認を終えてしまうケースが多い。
そうすると、数日が経って、大量のお金を必要になり、久しぶりに全財産を確認する時になって、一部のお金が盗まれていることに、ようやく気が付く訳だが、
その時には、もう遅い。
時間が経っている分、記憶も薄く、犯人を絞り出すことは難しい。
そういうわけで、今回の犯人も、全額を持っていかなかったのであろう。
ただ、それにしても、あれだけあったら、もっと盗っていってもいいのに・・(笑)。
まあ、ただキューバ人にとっての80ドルは、莫大な金額であることは間違いない。

それからマルタの様子は明らかに違っていて、今回の事件に傷つき、
ずっとそのことを気にしている様子であった。
俺の方はもう「しょうがないさ」と開き直っているのだが、
マルタはそうはいかなかった。

次の日の深夜、カーニバルから帰ってきた時、
もう一人の住人の男が家の前の入り口に座っていた。
「おかえり」と言い、鍵を開けてくれた。
後から気が付いたのだが、それは明らかにおかしい。
マルタは、その男の帰りは朝で、俺が帰ってきた後だから、ありえないと言っていたが、奴が鍵を持っているということは、俺のお金が盗まれたと推測される昨日の夜中、マルタの気が付かないところで、その男が出入りできているということだ。
あいつかな、犯人は。。。
だが、特定できる証拠がない。
そのまま事件は、闇に葬られてしまった。

サンティアゴを出る前日、「ビルマ」という占い師のところに遊びに行った。
なんでもビルマは、「あいのり」で一躍日本で有名になったらしい。
サンテリアという黒人宗教家の占い師で、日本にも来たことがあるという。
帰り際に、80$失跡事件の話を持ち出すと、知り合いのマルタからすでに情報が
入っていたようで、知っていた。
俺は事実を説明した後、「まあ、いいんだけど、もう気にしてないから」と言った。
「だけど、彼女(マルタ)は、大丈夫じゃないわ。だいぶショックを受けている。」と
ビルマに言われ、すっかり加害者扱いであった。
自分も加害者の気持ち、申し訳ない気持ちに陥ってしまった。
確かに、不用心にしていて、面倒くさいことに巻き込んでしまったので、
悪かったなぁと反省した。
それにしてもキューバ人の性格は極端である。

宿を出る時、最後にもう一度マルタと話した。
正直に俺の思ってる気持ちを話した。
また泣き出してしまったマルタをなだめながら、和解した。
しかし、このことはマルタの胸に嫌な思い出として残るのであろう。
残念だ。
80ドルはいずこへ・・・
犯人は見つからず、2人の被害者を作り出した事件・・・謎である。


      キューバ人のプライド★なおと


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