震災後にはじまった「おがつクラフトフェア」には看板ひとつありません。これまでは段ボールなどの手作り看板で済ませていましたが、今後もずっと続いていくものにしたいという想いを受け、未来スケッチ貯金箱から30枚の幟を贈らせて頂くことになりました。神楽幕の制作でもお世話になった岩手県の京屋染物店さんにお力添え頂き、一枚一枚職人さんの手で染め上げて頂きましたのでご紹介します!
神楽幕は一点ものなので、刷毛を使って描いていく「引染(ひきぞめ)」でしたが、全く同じものが複数枚必要となる今回は「手捺染(てなっせん)」という染型を使った技法で仕上げて頂きました。まずは文字だけを染める型を置き、木のヘラを使って染料を馴染ませていきます。次は別の型を使って周りを染色。ヘラを押し付ける強弱や引く速度など、職人さんたちの息が合っていないと均一には染まりません。リズミカルにどんどん進んでいくので単純そうにも見えますが、実はそこに経験と技術が詰まっているわけですね!
染め終わったら、生地の両端に「張手(はって)」と呼ばれる道具を取り付けます。ロープが付いた角材に釘がたくさん打ちつけられていて、ここに生地を刺してゆっくりと引き上げていき、ピンと張った状態でしばし乾燥。そしてまた新しい生地を台に貼り付けて染める、というのを何度も繰り返していきます。
昔は全ての工程が手作業だった染物の世界。もちろん今でも人の手による仕事には変わりありませんが、機械の力もうまく取り入れながら制作されています。例えば染型ひとつとっても、現在はコンピューター上でデザインし、型を彫るのはカッティングプロッターの仕事。実寸大の版下図をプリントして照らし合わせれば、何度でも同じ型を作ることができます。昔はというと、職人が下絵を見ながら渋紙を彫って仕上げていたので、そこにそれぞれの拘りや技、感性などが加わり、同じ下絵だとしても毎回違うものに仕上がるわけで、型というのは「どんどん鍛えていくもの」だったそうです。それが今は機械の導入により最初に作ったものが正確に繰り返されていくため、「一発勝負」になった分、初めから洗練されたものにしなければならないのだと仰っていました。
染める生地や気候によっても染料の調合が変わってくるそうで、例えば粘度が合っていないと色が滲んでしまったりもするし、裏側まで綺麗に染め上げることもできないんだとか。お話を伺っている間にどんどん染め上っていったわけですが、まだこれで終わりではありません。しっかり乾燥させたら窯で蒸し、色が落ちなくなるまで何度も手洗いを重ねます。そして最後に縫製をして、ようやく完成。まだ先は長いのです。600年以上の歴史を誇るものづくりの里、雄勝町。そこに掲げるに相応しい素敵な幟になりそうですよ!
おがつクラフトフェアの開催まで残り一ヶ月。イベントのPRも兼ねて「ARABAKI ROCK FEST. 14」の会場でワークショップを実施されると聞きお邪魔してきました!今回のメニューは、雄勝石のアクセサリーづくりと漁網ストラップづくり。それぞれ硯組合の職人さんと浜のお母さんたちが手取り足取り指導されていました。
雄勝石のアクセサリーづくりは、今年のおがつクラフトフェアから加わる予定の新メニュー。石を好きな形にカットして、磨いて、穴を開け、ペイントや彫刻をしてペンダントかネックレスにできる他、ピンを接着した雄勝石でバッジを作ることができます。このような小物であれば短時間で気軽に参加して頂けますし、雄勝石の加工工程を一通り体験して頂ける充実した内容。
この新しい取り組みを応援しようということで、未来スケッチ貯金箱から持ち運び可能な小型のボール盤(穴開け機)4台と、小型のルーター(彫刻機)を贈らせて頂きました。今回初めて活用して頂いたわけですが、小さなお子さんから大人まで扱える機械なので、たくさんの方々に雄勝石の加工を体験して頂くことができ、今後の可能性が広がりそうです!
雄勝石だけでなく、浜のお母さんたちによる漁網ストラップづくりも人気でした。おがつクラフトフェア当日は倍以上のワークショップメニューが用意されていますので、ぜひみなさん遊びに来てくださいね!5月25日におがつ店こ屋街(仮設商店街)にて開催します。雄勝の子供たちによるステージイベントや飲食ブースなども楽しめますよ。
初夏のような陽気に恵まれて、「おがつクラフトフェア2014」が開催されました。色んな企画やお店が立ち並ぶ中で、なんと言ってもメインとなるのはワークショップエリア。今年はなんと、雄勝ならではのものづくり体験コースが8つも用意されていました!
朝のミーティングにて、自分が担当するコースについて説明中の講師のみなさん。雄勝町内だけでなく、同じ市内の桃生町や山形県から応援にいらしている方の姿もありました。雄勝石が結ぶご縁ですね。ワークショップの受付を担当されていたのは、実行委員会の事務局を務める商工会や復興応援隊の地元のみなさんです。
応援先のひとつでもある雄勝花物語さんの体験メニューは押し花葉書づくり。もちろん、これらのお花は雄勝産。みなさんが手間暇かけて準備した押し花をピンセットで並べ、専用の和紙を被せてアイロンをかけたら完成です!お隣は、ARABAKI ROCK FEST. 14でも人気だった名振マザーミサンガのお母さんたちによる漁網ストラップづくり。色とりどりの漁網の中から好きな糸を選んで編むことができます。
雄勝町と言えば「雄勝石」。雄勝硯生産販売共同組合のみなさんによるワークショップの中でダントツの人気だったのがアクセサリーづくりでした。好きな石を選んだら、まずは押し切りという裁断機のような道具でカット。形が整ったら水に濡らしてヤスリがけ。雄勝石は一般的な石より柔らかくパイ生地のような層になっているので、はじめての方でもザクザク切ることができます。
ペンダントとキーホルダーをつくる際に必要となるのがこちらの機械。先日贈らせて頂いたボール盤です!狙いを定めて回転する刃をゆっくり下すだけで、誰でも簡単に穴を開けることができちゃいます。こんな風に自分で石を加工するチャンスはなかなか無いので、特産である雄勝石の魅力に触れて頂く良い機会になったのではないでしょうか。
アクセサリーの仕上げコーナーでは、同じく贈らせて頂いた彫刻用のルーターが活躍していました!みなさんかなり熱中していて、特に子どもたちの真剣な横顔がとても微笑ましかったです。雄勝石のバッジであれば、形ができた状態から自分で仕上げをするだけなので、小さなお子さんも楽しんでいました。完成すると、どこかみんな誇らしげ。
この他、自由にカットした石に文字や写真をプリントしてもらう雄勝石記念プレートづくりや、東京駅舎の屋根に葺かれたことで有名になった雄勝石スレートの絵付け体験、純東北産蜜蝋キャンドルと雄勝石キャンドルホルダーづくりなど、盛り沢山のワークショップエリアでした!
制作風景をご紹介した手染めの幟旗も雄勝の空で元気にはためいていました。新緑の季節にピッタリの美しい萌黄色。ものづくりの里としての再出発を後押しする、はじまりの色です。そしてもうひとつ、未来スケッチちょきんばことして「雄勝の手しごと写真展」のパネル制作に協力させて頂きました。完成したものを商品として手にすることはあっても、それが生まれてくる過程を目にすることはほとんどありません。作り手の姿も含めた雄勝のものづくりを感じて頂きたい、という想いが込められています。
写真展と同じブースでは、今は貴重な存在となった硯職人さんによる硯彫りの実演が行われ、その横では実際に雄勝硯で墨をすって書道体験ができてしまうという、知って、見て、触れる、充実の内容となっていました。
ステージでは、小学生による南中ソーランや花笠音頭が披露された他、ゲストをお招きしてのトークショーなども行われていました。
応援先のひとつである、鼓舞のメンバーの雄勝町伊達の黒船太鼓保存会のみなさんも登場!今回はおがつクラフトフェアにちなんで、雄勝石で作った石琴を用いる楽曲が演奏され、力強い太鼓と涼やかな石の音が会場に響き渡っていました。600年の歴史を誇るものづくりと芸能の里として、とても意義のあるプログラムだったのではないでしょうか。
出店ブースでは、今が旬であるホヤが注目を集めていました!種付けから出荷まで少なくとも三年を要するホヤの養殖。つまり、震災後はじめて収穫できたホヤなのです。お昼時にはお祭りらしく屋台でたこ焼きを食べたり、海鮮丼を食べたり、みなさん胃袋でも雄勝を満喫されているようでした!
もちろんクラフト製品の販売ブースもありました。雄勝石を加工して作ったものだけでなく、陶器やガラス製品、手拭い、アクセサリー、布小物など種類はさまざま。地元だけでなく、日頃から雄勝を応援しておられる作家さんたちの商品もずらりと並び、会場に花を添えていました。
小さなお子さんからお年寄りまで一日中楽しめるおがつクラフトフェア。来年以降も5月の同じ週末に定期開催していくそうですので、ぜひ遊びに来てくださいね!
実行委員の方々からお手紙をお預かりしましたのでご覧ください。クラフトフェアから描く雄勝の未来、そして「ちょきんばこ」を通して応援してくださった皆さんへの感謝の気持ちを綴って頂きました。