長かった東北の冬も終わりに近づき、草木たちに力がみなぎり始めてきたこの時期。春に向けてお庭の整備をなさるということでお邪魔してきました!2011年からこの場所にお花を植え続けてらっしゃる徳水ご夫妻からお話しがあった後、さっそくトラックから大量の苗を下ろしていきます。全て並べてお花の絨毯ができた頃、あたりは甘い香りに包まれて一足早い春の訪れとなりました。
雄勝町の住民さんたちと、この日に合わせて各地から集まったボランティアさんたちで力を合せて苗を植えていきます。場所ごとにデザインを考えながら、少しずつ少しずつ。ちなみに、この苗を生産している農家さんは豪雪によりとても大きな被害を受けたそうで、応援する意味でも買ってあげないと、とこの苗を手配してくださった造園屋さんがおっしゃっていました。
まだまだ終わりは見えませんが、作業の手を休めてお楽しみのランチタイム!雄勝の仮設商店街に入っている洸洋さんの雄勝湾カレーをご馳走して頂きました。その名の通り、雄勝の海の幸をたっぷり詰め込んだカレーで、名産の帆立や牡蠣、ムール貝などがどっさり。ここだからこそ味わえる贅沢ですね。雄勝のみなさんが大切に育んできたお庭で一休みさせて頂いたら、元気に作業再開!
まだ更地の状態ですが、こちらはこの春から新設するハーブ園。町内の仮設住宅で生活している高齢者の方々が、少しでも外に出て体を動かす機会をつくり、それが少しでも収入を得ることに繋がれば。まずは丈夫で栽培もしやすく、簡単な加工品にすることもできるハーブから挑戦し、将来的には果樹園もつくって雇用も生みながら商品開発するところまでステップアップしたい。そんな徳水ご夫妻の想いを受け、基礎作りに必要な土と枕木、そして最初に植えるハーブの苗を贈らせて頂くことになりました。
津波を被った後、瓦礫撤去の重機などで踏み固められた地面では満足に植物を育てることはできません。何よりも大切で必要なのは「土」なんですね。山から運んできた大量の土砂を均し、まずは図面と照らし合わせながら測量。土が流れていかないようにその周りに石垣を作っていきます。ちなみにボランティアさんたちは全員素人なので、みんなで相談しながらの作業(笑)昔の人って、凄いですね!
お花の植え替えも着々と進み、雄勝の玄関口である道路側にはI love Ogatsuの立派な花壇が完成!文字の枠は、特産品であり東京駅舎の屋根にも使われている雄勝石スレート。愛情たっぷり、雄勝ならではの花壇です。陽も傾きはじめ、この日の作業はここで終了。翌日に続きます。
作業二日目。津波で壊れたままになっている防波堤のところに、石垣に使う手ごろな石が転がっているという耳寄り情報をゲットし、人力で拾い集めてハーブ園のところまで運搬。石垣にできそうな雄勝石の原石もたくさん発見しました。なぜ山にあるはずの雄勝石が海辺にゴロゴロしているかというと、昔は製品にならない質の低い石をそのまま海に捨てていたため、その名残だそうです。せっかくなので、ところどころ雄勝石も積んでみることに。
この日は近くにお住まいの住民さんが郷土料理の「おくずかけ」を作って差し入れてくださいました。具沢山なとろみのついた汁物で、心も体もポカポカ。午後も張り切っていきましょう!ハーブ園の整備と並行して、バラ園の中では住民さんたちが種まきに着手。震災後、雄勝町に住んでいた方々の多くは他の地域で生活されています。町は更地になり、人も住めない状態が続いていく中で、ひとりでも多くの方に種をまいてもらって、それが気軽に雄勝へ帰って来られるきっかけに、身構えずに雄勝と繋がり続けられる理由になってくれたら。そんな想いが込められているのだそうです。
雨にも負けず、突風にも負けず、みぞれやあられにも耐え、二日間の作業もいよいよ終盤に突入。ハーブ園の石垣もようやくそれらしくなったところで、通路作りに取り掛かります。煉瓦をバケツリレーで運んで、綺麗に敷き詰めていく作業。夕方まで粘りましたが完了には至らず、残りは次回に持ち越しとなりました。ゼロから創り上げるのは本当に大変!ハーブの苗を植えられるのはもう少し先になりそうです。
震災から三年と一ヶ月目の今日。夕暮れの雄勝にひっそりと灯された希望のあかり。きれいに手入れされたお庭にまぁるいキャンドルが並べられ、有志の方々の手でひとつひとつ大切に灯されていきます。普段から立てかけられている竹灯籠にも光が宿り、ほのかに浮かび上がる花や天の川。
ここは人が住めない地域。太陽が顔を隠せば、あたりは闇に包まれます。穏やかにゆらぐあかりの中で、お茶を飲みながら繰り返される他愛もない話。そこには優しい時間が流れていました。亡くなられた方々を弔いたいという徳水ご夫妻の想いからはじまったこの場所。月命日に灯されたこの灯りを囲みながら、地域のみなさんが口々に「きれいだねぇ」と呟いてらっしゃったのが印象的でした。
震災後、たくさんの人が手を添えたことで築き上げられた、この癒しの空間。あの日から三年以上が経過した今、はじめてこの場所を訪れる人にとってはただの庭のひとつに映るかもしれませんが、全てはマイナスからのスタートでした。
左下は2011年4月の写真です。ちょうど中心に写っているのが現在バラ園になっているところ。ここは雄勝町の玄関口であり沢山の建物が立ち並んでいる場所でしたが、約20mもの津波にのみ込まれ、ほぼ全ての家が流失。道路だけは開通しているものの、大量の土砂や瓦礫に覆われた状態でした。中央の写真は一年以上が経過した2012年5月。鉄筋コンクリートの建物以外はある程度片付き、ちょうど本格的に花壇の整備をはじめている様子が写っています。右下は2012年7月撮影。ポピーが満開を迎え、町がようやく色を取り戻しました。
左下の2013年1月の写真を見ると、唯一残っていた建物も取り壊されたことが分かります。残っていた大型の建物の解体が進むにつれ、雄勝町は本当に更地と化していきました。中央は2013年3月で、最初の小屋が設置され本格的な整備がスタートしたところ。右下は2013年6月撮影。復旧工事に使用する砕石の山があちこちにできるようになりました。この頃には追加でトイレ用の小屋も設置。再び緑の季節がやってきましたが、山際に目をやると、津波を被った木々が塩害により立ち枯れしているのが分かります。
この定点撮影された写真は、発災直後からボランティアとして雄勝に関わっておられたカメラマンの鈴木省一さんにご提供頂きました。現在はそのまま石巻に移り住まれ、活動を継続されています。こうして時系列で写真を見返してみると、改めてここで起こったことについて考えさせられるのと同時に、“今”がとても尊いものに映るのではないでしょうか。
前回の作業から三週間が経ちました。気温も高くなり、植物たちにも変化が。まだ小さくて硬い蕾だったチューリップも、この短期間にぐんぐん伸びて立派な花を咲かせていました。もう少しで雄勝にも桜の季節がやってきます。
山から運んできた土を均すところまでで終わっていたので、今回は混ざっている小石などを取り除きながら、丁寧に堆肥を混ぜていきます。ハーブの苗を植えるためには、ふかふかで栄養がある土が必要なのです。
こちらは石垣チーム。海から拾い集めてきた石をひたすら積んでいきます。水はけを良くするため、傾斜がつくように土を削るのがポイント。前回から引き続き応援に来てくださったボランティアさんも多く、ついに二段目まで完成です!
未来スケッチちょきんばこから贈らせて頂いたハーブの苗も無事に到着!柔らかくておいしそうな新芽がびっしり。このまま植えてしまうと周囲の山に棲む野生のシカたちに食べられてしまうので、ぐるっと柵で囲う準備も進めていきます。
手作業で土づくりをしていたら、巨大な助っ人が登場!近所で畑をやっている住民さんがトラクターに乗って応援に来てくれました。やっぱり機械だと早いですね。準備が整ったところからハーブの苗を植えていきます。
一晩経って作業二日目。昨日植えたハーブの苗は、シカに食べられることなく残っていました。気づかれなくて良かった!引き続き土づくりをしながら苗植え開始。どんな用途に使えるハーブなのかジャンル分けをして、ブロックごとに植えていきます。
こちらは通路を準備中。土を踏み固めてしまうと苗の生育が悪くなるので、通る場所は統一した方が良いからだそうです。贈らせていた枕木の他に、煉瓦も組み合わせながらデザインに沿って組んでいきます。普段、造園のお仕事をされているボランティアさんも来てくださって効率アップ!
シカ柵はなんとしても今日中に完成させなければなりません。柱を埋め込むため、硬い地面に深い穴を掘るのが一番大変。でも、この場所は常に突風が吹きぬけるので、しっかり作らないとすぐに飛ばされてしまうのです。建物が何も残っていないため海風を遮るものがなく、作業中も風と埃に悩まされ…。
完成した石垣はラベンダー畑になりました!雄勝の玄関口が紫色の絨毯で彩られる日もそう遠くないかも知れません。苦労して積み上げた石垣で、無事に育ってくれることを祈るばかりです。徳水ご夫妻も、ラベンダーの花が咲くのが本当に楽しみだとおっしゃっていました。
雄勝の方々とボランティアのみなさんが、力を合わせてカタチにしたハーブ園。この日の最後に、土と苗と枕木を贈らせて頂いた証として看板を立てさせて頂きました。マイナスから何かを創り上げるというのは本当に大変なこと。これから花と緑が美しい時期になりますので、ぜひ足を運んでみてください。実際に見てみたら、その凄さがほんの少しだけ分かると思いますよ。
春らんまん。まさに今の雄勝にピッタリのこの言葉。トンネルを越えて雄勝に入ると、一瞬にしてお花の香りに包まれます。今の時期、建物が解体されて更地になった場所がシロツメクサの絨毯になっていて、町中がお花畑のよう。植物の生命力を感じます。応援先のお庭もポピーやバラの蕾が開きはじめ、先日植えたハーブたちもすくすくと成長していました。
今日の作業は引き続きハーブ園の通路づくり。前回同様、溝を掘ったところに煉瓦を敷き詰めていきます。関東から駆けつけてくださったボランティアさんたちも、もう手慣れたもので、あっという間に完成しました!
そして今回は、未来スケッチちょきんばこから追加の応援もお届けしてきましたよ!雄勝の住民さんとボランティアの方々が、三年間かけて創り上げたこのお庭。誰もが驚くほどとても立派なものになりました。ようやくひとつのカタチが整ったところではありますが、ここからまた次に進むためには、「人」の存在が更に大切になっていきます。そのために、まずは人が足を止め、集いやすくなる場を整えようということで、パラソル付きのテーブルセットとベンチを贈らせて頂くことになりました。
長く使って頂くために耐久性のある金属製のものを選んでみました。バラをモチーフにしたものなので、「置いてあるだけで、ぐっと雰囲気が変わった!」と喜んで頂けました。それともうひとつ。今の雄勝には小さなお子さんを連れて遊びに行ける場所がありません。そんなお母さんたちの切実な悩みが聞こえてきたことを受け、鉄製の子ども用ブランコも二台設置させて頂きました。ハーブに囲まれながら、親子でのんびり過ごせる空間になったら素敵ですね。
お花が美しい季節となり、雄勝花物語のみなさんの活動も本格化していきます。今週末の6月6日~7日にはコンサートや写真教室が開かれる他、ここで育ったお花を活用した押し花ポストカードの制作や栽培したハーブの出荷など、雄勝に新たな人の流れと仕事を生み出していくため、少しずつ前進中です。ぜひ足を運んで頂ければと思います!
春にハーブの苗を植えてから三ヶ月が経過し、夏の光を浴びたハーブたちはすくすくと成長しています。その中でも一番立派な姿を見せてくれたのがラベンダー!ボランティアの方々が苦労して積んだ石垣の上で大きく成長し、たくさんの花を咲かせてくれました。その甘い香りに誘われて、ミツバチやチョウたちも大集合。心安らぐ光景が広がっていました。
この日は初収穫となったラベンダーを活用し、雄勝町内の仮設住宅や内陸部で避難生活を送っているみなさんとラベンダースティック作りに挑戦!刈り取ってきたラベンダーを好きな色のリボンで編み上げていきます。初めてのことなので思うように進まず、悪戦苦闘。嘆き声と笑い声が絶えません。
互いに教え合いながらなんとか完成!今年はもうラベンダーの季節は終わってしまいますが、この経験を生かし、来年はみなさんが講師となってラベンダースティックづくりのワークショップを開催できたら素敵ですね。集中して疲れたところでランチタイム!今はこういった場が無ければ顔を合わせることさえ難しくなった雄勝町のみなさん。大切な憩いのひと時です。
リフレッシュが済んだところで後半はラベンダーのサシェ作り。自然乾燥させた蕾を手作業で丁寧に外していきます。それを羊毛で包み、オーガンジーの巾着に詰めたら完成!新商品として販売することを目標に、現在その準備を進めておられます。無農薬・有機栽培した雄勝産ラベンダーのサシェ。遊びにいらした際は是非お手に取ってみてください。お母さんたちから初夏の香りのお裾分けです。
早いものでラベンダーの季節も終わりを告げ、また更なる成長を期待して刈り戻し作業も行われました。少しもったいないような気もしますが、花が咲いたまま放っておくと元気が無くなってしまうため。しっかり力を蓄えて、また来年も紫色の絨毯を楽しませてほしいですね!
やわらかな風と共に感じる春のにおい。あともう少しで、東北の長い冬も終わりを告げます。久しぶりに訪れたお庭はまだ茶色の世界。でも、数ヶ月後にはまた色とりどりのお花で埋め尽くされ、ガラッと様変わりするのでしょうね。ちょうど一年前に贈らせて頂いたハーブの苗たちも、しっかり越冬することができました!連日の霜や雪に埋もれ、枯れてしまうのではないかと心配でしたが、無事に青々とした新芽をつけ始めてくれて一安心。
ボランティアの方々の力作である石垣のラベンダーたちも、こんなに立派に成長しました!ほんとに育つのだろうかと心配になるほど、ひ弱に見えた手のひらサイズの苗だったのに、今やあの何十倍もの大きさ。予想以上に育ちすぎてしまい、このままだと窮屈過ぎて枯れてしまう可能性があるため、春が来る前にお引越しをすることになりました。
密集しているところから間引いたり、うまく成長できずにいる小さなものを助け出したりして、水はけがと風通しが良さそうな一段高い場所へ移動。既に植わっていた苗は他に移し、堆肥をたっぷり入れて耕したら準備万端!スペースが広がった分、弱っていた苗も大きく育ってくれるといいですね。
半日ほどでお引越し完了!きっと初夏になったら、去年より更に立派なラベンダー畑になるのではないでしょうか。数ヶ月後には、紫色の芳しい絨毯がお出迎えしてくれる予定ですので、ぜひ良い時期に遊びにきてくださいね。他のハーブたちも成長していると思います。
あれから間もなく4年。高台では集団移転に向けた土地造成工事が行われ、更地のまま目に見えた工事が進まなかった雄勝町の中心部も、最近になって新たな町づくりの計画を示す看板や、防潮堤の高さを示すやぐらが建ち、土砂や砕石も積み上げられるようになりました。
今週末の3月8日(日)には、雄勝ローズファクトリーガーデンを起点に「第三回 被災地ウォークinおがつ」が開催されます。ナオト・インティライミも第一回目に出席し、地元の方々と歩かせて頂きました。何かが変わろうとしている「今」と、全てが失われた「あの日」。年に一度、この日、この場所でしか聞けない話があります。週末を、雄勝で過ごされてみては如何でしょうか。
大切にみんなのお庭を育んでいらっしゃるスタッフの方々からお手紙をお預かりしました。何も無くなってしまったふるさと雄勝への想い、そして「ちょきんばこ」を通して応援してくださった皆さんへの感謝の気持ち、ご覧ください。